大阪暁光高等学校の最新ニュース・イベント情報をお届けします!秋の深まりとともに木々が色づき、命をつなぐ実りの季節を迎えました。本日、この佳き日に、河内長野市教育長様、公益財団法人 淀川勤労者厚生協会附属 西淀病院看護部長様をはじめ、数多くのご来賓の皆様、そして保護者の皆様にご臨席賜り、第12回戴帽式を挙行できますことを、心より御礼申し上げます。これから患者さんと深く関わっていく戴帽生の皆さんに、お祝いと励ましの言葉を贈ります。
先ほど読み上げられた「決意文」は、本当に素晴らしく、胸を打たれました。聞けば、全員が綴った何十ページにもわたる文章を、運営委員の皆さんが丹念にまとめて作成されたとのこと。入学からの思いが詰め込まれた、まさに等身大の「決意文」でした。たじろぎながらも、歩み続ける姿に大きな感銘を受けました。
同時に、驚いたこともあります。思っていた以上のみなさんのこころの揺れや葛藤の深さです。「公立高校に進学した友達のSNS投稿を見るたびに羨ましくなってしまう」「『患者さんを思ってベッドが作れていない』と指導を受けてもその意味が分からなくて悔しい思いをした」 「これまで何度も何度も心が折れそうになった」……。改めて看護学生の道のりの厳しさを感じます。
数日前に「決意文」を拝読するまでは、式辞でナイチンゲールが残した厳しい言葉を紹介し、看護師の覚悟を問いたいと考えていました。その言葉は「患者の命と苦しみを、自分の子どもが病気で死ぬかもしれない時のような、張り裂ける思いで受け止めなさい」というものです。患者さんの痛みや不安に気付けず、寄り添えない者は、看護師になる資格などそもそもない、という厳しいメッセージです。
どうでしょうか? 自分には重すぎて受け止められないと感じた人がいるのではないでしょうか。そんな皆さんには、「看護師に求められる資質は、最初から完璧に備わっているものではなく、それは、実習で出会う患者さんとの時間の中で、また、一緒に学ぶ仲間たちとの関わりの中で、少しずつ育まれていくもの、これからです!」とお伝えたいです。
2年前に卒業した専攻科の先輩が語った言葉をそのまま紹介します。
「私は、指導者さんから指摘されたことをすぐに修正する力がなく、何度も回数をこなすことでやっと人並みに出来るようになります。だから、短期間で手技を習得することが求められる実習では、いつも壁にぶち当たり、指導を受けていました。自分の出来なさに、病棟の廊下や患者さんの前で泣いたこともあります。それでも、『今、この人に必要なことは何か』という思いだけは大切にしていきたと思っていました。4年生の老年看護学実習の時、リハビリを嫌がっていた患者さんのために、少ない知識と経験、そして教科書を頼りに自分なりに精一杯考えてパンフレットを作成しました。つたないパンフレットだったのに、その患者さんはそれを手に取ってくださり、リハビリに取り組み、少しずつ『できること』が増えていきました。実習最終日の挨拶で、涙を流しながら、こう言ってくださいました。『あなたともう会えなくなるのが寂しい。もらったパンフレットは毎日見るね。あなたは絶対、いい看護師になると思う。つらいこともあると思うけど、頑張って』この時、初めて看護の楽しさに気づきました。悩みながらも、患者さんのことを想い、努力することで、その思いは必ず伝わる。自分がしている勉強は、患者さんの『できること』を増やしていくためにある。1年からの苦労は、このためにあったんだと思います。」
みなさん、臨地実習は厳しい学びの場ですが、あなたを一回りも二回りも大きく成長させてくれることでしょう。崇高な使命感を胸に、患者さんやご家族から信頼される存在となれるよう、どうか自分を磨き続けてください。「決意文」のように、互いの思いを素直に出し合える皆さんなら、きっと乗り越えていけるはずです。
さて、今、世界に目を向けると、戦争によって多くの尊い命が失われています。2年以上続いたガザへの爆撃は、2万人の子どもを含む6万7000人もの命を奪いました。命が繋がっても、恐怖と喪失の悲しみによって、心の傷が癒えることはありません。どうすれば、戦争を止めることができるのか。どうすれば、人々が互いに支え合い「共に生きる社会」を築くことができるのか。どうすれば、人が人として尊重され、差別されずに幸せに生きることができるのか・・・、いのちと向き合う看護学生として、そして「平和と民主主義の実現を願って誠実に生き、努力する人間」を育てることを教育理念に掲げる学園の一人として、考え続けてください。
看護師への道のりは平坦ではありませが、私たち教職員は、共に歩んでいく覚悟です。保護者の皆様、実習を伴う看護学生は、大きなストレスを抱えます。引き続きお子様に寄り添い、充実した高校生活を送れるよう、ご支援をお願いいたします。最後になりますが、ご来賓の皆様、本日はご多用の中、ご臨席賜りましたことを心より御礼申し上げます。まだまだ未熟な生徒たちです。引き続き温かいご指導とご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げ、式辞とさせていただきます。
2025年11月1日